WEB版けやき通信第44号「遺産分割内容の検討」

遺産分割内容の検討

1.まず最初に・・・
 相続人及び遺産の範囲が確定したら、次に、どの遺産を相続人の誰が取得するかを話し合いで決めていきます。これを「遺産分割協議」といいます。

 遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。
 また、相続人全員が合意していれば、法定相続分と異なる割合(例えば、特定の相続人が何も取得しない)とすることもできます。

2.遺産分割の基準
 「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と、民法に規定されています。
 例えば、事業で使用する不動産を事業経営者の相続人とそうでない相続人が持分で取得することで事業に支障が生じるおそれがある場合、事業経営者である相続人が当該不動産を単独で取得し、他の相続人には代償金などを支払うことで相続人の公平を図ることになります。

3.遺産分割の回数
 遺産分割は1回の話し合いで遺産全部について取得者を決めることが多い(原則)ですが、一部の遺産についてのみすることも認められています。これを「一部分割」といいます。
 例えば、相続税を支払うための現金を準備するために不動産を売却しなければいけない場合、一部分割を行うことがあります。
 一部分割は、①相続人全員が一部分割であることを認識しているか、②残りの遺産で他の相続人の公平を図ることができるかということに注意を払う必要があります。

4.遺産分割の方法
 遺産分割の方法には、(1)現物分割、(2)代償分割、(3)換価分割の3種類があります。

(1)現物分割
 不動産・預貯金・株といった現物をそのまま相続人に配分する方法で、遺産分割の原則的な方法です。

(2)代償分割
 現物を特定の相続人が取得し、現物を取得した相続人が他の相続人に金銭等を支払う方法です。
 代償分割は、現物を物理的に細分化することで価値が低下する場合や物理的に細分化できず共有とすることで権利関係が複雑になる場合に活用することで、価値の低下や複雑な権利関係を回避でき、かつ現物を取得した相続人とそうでない相続人との公平を図ることができます。

 例えば、遺産が自宅の土地・建物のみの場合、自宅の土地・建物は長男が取得し、遺産を取得できなくなる長女には、長男が法定相続分相当の金銭を支払うというものです。

(3)換価分割
 遺産を売却し、売却代金を相続人間で配分する方法です。
 換価分割は、①現物を現金に換えて配分することで取得する遺産の多寡の調整を図ることができる、②空家となる実家など活用されない資産を処分することにより、その後の管理の手間や負担を抑えることができるといったメリットがあります。

 遺産分割の際、「現物分割」に固執していると相続人間の公平が図られず円滑に協議が進まない場合があります。その時は、「代償分割」「換価分割」を織り交ぜて話し合いをしてみてはどうでしょうか。

5.紙面版けやき通信
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