WEB版けやき通信第35号 遺言に関するQ&A 第9編

遺言に関するQ&A 第9編

 今月号は遺言に関するQ&Aの第9編として、「推定相続人の中に異父母のきょうだいがいる」をテーマとします。第46号(2023年10月号)もご参照ください。

Q1.どうして「推定相続人の中に異父母のきょうだいがいる」をテーマとしたのですか?
A1.遺言を作成することでスムーズな財産承継ができますので、是非とも遺言の作成を検討してもらいたいからです。

Q2.異父母のきょうだいがいる相続は、どの点で大変ですか?
A2.「相続人全員で話し合う」点に困難性があります。

 遺産をどのように分けるかについては、①相続人全員で話し合い、そして②相続人全員が合意する必要があります。

 異父母のきょうだいであっても関係性が良好であれば、上記①も②も心配する必要がないかもしれません。しかし、相続人を確定するため戸籍を収集中に異父母のきょうだいの存在が判明することもあります。このような場合、判明した方とは面識がないことが多く、その方に相続人であることや、遺産分割をするため協議に参加して欲しいことを伝えるのには勇気がいると思います。また伝えたとしても協議に参加してもらえるか、円満に協議がまとまるかについて不安があるかと思います。

Q3.どうして遺言があると相続手続きがスムーズになるのですか?
A3.相続人全員で話し合うことなく、遺言で定めた人に財産承継ができるからです。

Q4.異父母のきょうだいに遺留分はありますか?
A4.あります。

 「遺留分」とは、一定の相続人のために最低限保証された遺産の取り分のことです。

 例えば、相続人が長男Aと二男Bの2名の場合において、「全ての財産を長男Aに相続させる。」という遺言があれば、Bは遺産を取得することができません。そうなると、BはAと同じ「遺言者の子」であるにも関わらず遺言の有無によって遺産を取得できるか否かが変わってしまいます。そこで、Bの遺産に対する取り分を最低限保証するための制度として遺留分があり、遺言の有無によって遺産を「取得できる」「できない」の差の解消を図っています。

 異父母のきょうだいは、父又は母が違いますが「遺言者の子」であることに変わりなく、そのため遺留分もあります。

Q5.遺留分請求を拒むことはできますか?
A5.できません。

 遺留分請求があった場合、それを拒むことはできず、遺留分に相当する金銭を支払わなければいけません。そのため遺留分請求に対する事前の備えや対策として、次のことも検討する必要があります。

 ①遺留分に相当する金銭を予め準備しておく。
 ②遺留分を有している相続人には、遺留分に相当する財産を承継できるよう遺言の内容を工夫する。
 ③付言事項に、遺留分を行使しないよう記載する。

 なお、付言事項に強制力はありませんので、記載したからと言って「遺留分請求ができなくなる」「拒むことができる」ということにはなりませんのでご注意ください。

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