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遺言の活用~清算型遺言~
1.現物を承継させる遺言の限界点
遺言で財産を承継させるとき、不動産は不動産、株式は株式といったように「現物を現物のまま」承継させることが多いかと思います。しかし、実際の相続では、相続人が複数いるため一方に財産を承継させると他方が少なくなるということが多々あります。
また、「固定資産税の負担や管理が大変だから不動産は嫌」「お金(預貯金)が欲しい」といった、相続人の承継する財産に対するニーズもあります。
2.清算型遺言とは・・・
「清算型遺言」とは、財産を売却処分して金銭化し、遺言者の債務や売却に要した諸費用を差し引いた残額を相続人等に分配することを内容とした遺言です。
なお、売却する財産は遺言者が自由に決めることができますので、「全ての財産」としても良いですし、「特定の不動産や株式のみ」とすることもできます。
3.清算型遺言の活用例
清算型遺言の特徴は、財産を金銭化することで、
①柔軟な分配ができる。
②承継者がもらいやすい。
という点にあります。そして、この特徴は、次のようなケースで活用できます。
①空家対策
相続が発生することで、実家が空家になることも珍しくありません。
そこで、実家を売却し、相続人には不動産ではなく金銭で相続させることで空家対策を行えます。
②争族対策
「取得する財産の多い・少ないを巡ってトラブルが生じそうだ。」と感じている方もいると思います。
現物を承継させようとすると、どうしても多い・少ないが生じ、相続人の間に不平等が生じます。そこで、金銭化して分配額の平等化を図ることで、「争族争い」を防げる可能性があります。
③もらいやすくするため
自分には子(相続人)がいないので、お世話になった知人や友人に財産を譲りたいと思っている方もいます。この時、「もし自分が財産をもらう立場なら・・・」と考えてみてください。
具体的に不動産で考えてみます。
まず最初に、固定資産税や今後の管理の負担が思い浮かびます。また、託されたのにそれを直ぐに売却しても良いだろうか?と思うかもしれません。
このように、現物を譲受けるのはハードルが高いといえます。そのため「もらいやすい」環境を整える方法として、清算型遺言を活用することが考えられます。
4.遺言執行者について
「遺言執行者」は、遺言の内容を実現するために各種手続きを行う人です。遺言執行者は遺言で定めることができ、資格は必要ありません。
しかし、清算型遺言では、①売却手続き、②遺言者の債務や諸費用の支払い手続き、③相続人等への分配手続など手続きに法律上の課題も多く、高度な専門性が要求されます。そのため、司法書士・弁護士など専門職に「遺言執行者」を依頼することをお勧めします。
5.最後に
遺言を作成するとき、「どの財産を誰に渡したいか」を考えると同時に、「どうすれば気持ちよくもらってくれるか」を考えるのも大切なことかもしれません。
6.紙面版けやき通信
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