WEB版けやき通信第13号「相続人が未成年の場合の遺産分割 ~特別代理人~」

相続人が未成年の場合の遺産分割 ~特別代理人~

1.相続人が未成年の場合の遺産分割
 今月号では、「相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割」についてご説明します。
 「事例」として、が死亡し、その相続人は長男(未成年)の2名とします。

2.未成年者の法律関係(親権
 令和4年4月1日より、成人となる年齢は18歳となりましたので、「18歳未満」の方が未成年です。
 未成年者は一人で自由に契約をすることができません。契約をするには、①親が子に代わって行うか、②親の同意を得て子が行う必要があります。
 このように、親が子に代わって契約をしたり、子が契約をすることに同意する親の権利を、「親権」といいます。逆に、子は成人になることで、一人で契約ができるようになります。このことは、遺産分割の協議でも同様です。

3.利益相反
 親権者が未成年の子に代わって契約ができることは上述のとおりですが、上記事例の場合、相続人兼親権者であるが、相続人である長男に代わって遺産分割の協議ができるとなると、が親権者という立場を悪用し「母が遺産全部を取得し、長男は一切取得しない。」という、「親が得をして子が損をする」状態が、母一人の判断でできてしまいます。

 このように、親が親権者という立場で「親が得をして子が損をする」状態になることを「利益相反」といいます。そして、「利益相反」の状態での契約については、民法という法律で一定の制限がされています。
 なお、「利益相反」に該当するか否かは、契約内容の結果で判断するわけでなく、行為の外形上「親が得をして子が損をする」状態か否かで判断します。ですので、上記事例の場合、母は長男の親権者という立場で遺産分割の協議をするとはできません。

4.特別代理人の選任
 「利益相反」の状態で契約をする場合、未成年の子のために「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申立てる必要があります。
 特別代理人は、未成年の子のために、未成年の子に代わり契約をする人です。

5.特別代理人の資格
 特別代理人になるための資格は特別ありません。
 しかし、誰でも良いわけではありません。未成年者の権利や利益を守るとい視点が必要であり、一方当事者である親権者の意向に流されてばかりではいけません。
 なお、実際の事案では、亡くなった方のきょうだいや親が特別代理人の候補者となることが多いです。

 今回は、相続人の中に未成年者がいる場合は、遺産分割の協議をするために「特別代理人」の選任が必要であることをお伝えさせていただきました。

6.紙面版けやき通信
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