WEB版けやき通信第15号「相続人の中に認知症の方がいる場合の相続手続き」

相続人の中に認知症の方がいる場合の相続手続き

1.相続人の中に認知症の方がいる場合の問題点
 今月号では、「相続人の中に認知症の方がいる場合の相続手続き」をテーマに説明して行きます。

2.問題の所在
 遺産分割協議は、どの遺産を相続人の誰が取得するかを「話し合い」で決めることです。そして、話し合いをするには、当事者が「公平」な立場であることが大切です。
 しかし、認知症の方は、判断能力が不十分であったり低下しているため、時に自分に不利な話し合いがされているにも関わらずそれに気付くことができないことがあります。
 このように、判断能力が十分な方とそうでない方とが話し合いをすることは「公平」であるとは言い難く、そこに問題があります。

3.対応方法
 認知症などで判断能力が不十分・低下している方が「公平」な立場で話し合いをするには、その方をサポートする必要があります。そして、そのための制度として「成年後見制度」があります。 
 今回の事案では、成年後見制度を利用して相続手続きを進める必要があります。

4.成年後見制度とは
 成年後見制度は、判断能力が不十分な方を法律面や生活面で保護したり支援するための制度です。
 具体的には、家庭裁判所で選任された成年後見人等が、判断能力の低下した方に代わって契約などを行い、財産を適切に管理して支援する制度です。

5.成年後見制度の詳細
 成年後見制度は、①判断能力低下の有無、②判断能力の程度により、次のように分かれます。

「法定後見制度」は、既に判断能力が低下している方 を対象としています。「任意後見制度」は、今は判断能力が低下していない方を対象に、将来、判断能力が低下した場合に備えて契約を契約をしておくものです。

6.名前は書けるけど・・・
 相続登記のご相談を受けていると、「認知症ですが名前は書けます。それではダメですか?」と聞かれることがあります。
 遺産分割協議は、どの遺産を相続人の誰が取得するかを「話し合い」で決めるものです。そして、話し合うためには、「どのような種類の遺産があるか」「自分の相続分はどれだけか」「遺産を取得したりしなかったりすることで、自分の財産や生活などにどのような影響があるか」を十分理解したうえで判断する必要があります。ですので、名前が書けるというだけでは不十分です。

 今回は、認知症の場合について説明しましたが、知的障害や精神障害の方の場合も同様です。

7.紙面版けやき通信
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