WEB版けやき通信第40号「遺産の確認(総論)&相続放棄について」

「遺産の確認(総論)&相続放棄について」

1.遺産とは・・・
 遺産とは、亡くなった方が相続開始時に有していた財産のことを言います。そして、この財産の中には、現金・預貯金・不動産・株・投資信託・貸金債権といった「プラスの財産」だけでなく、借金などの「マイナスの財産」も含まれます。また、賃貸マンションの賃貸人たる地位や保証人としての地位などの権利や義務も含まれます。

 一方、死亡退職金や生命保険金(受取人が亡くなった方以外の特定の人と決まっている場合)、生活保護受給権といったその人固有の権利(一身専属的権利)は、遺産に含まれません。

2.遺産の確認は難しい、でも重要で大切
 相続人の多くは、亡くなった方の財産のうち主だったものは把握していますが、詳細となると「分からない」「自信がない」ということが多いようです。実際に、亡くなった方の遺品整理をしていたら定期預金証書や知らない土地の権利書が出てきたということを仕事柄よく耳にします。
 最近ではネット銀行や通帳レスの銀行、インターネット証券などを利用している方も増えていますので、「モノ」を探して遺産を見つけるということが昔に比べ難しくなりつつあります。
 このように、亡くなった方がどのような財産を有していたかを正確に確認するのは非常に難しいといえます。

 しかし、亡くなった方の遺産を正確に調べることは、その遺産を「引継ぐ」「引継がない」を判断するうえでとても重要で大切なことです。なぜなら、借金も遺産に含まれますので、もしプラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合、「相続放棄」を検討する必要があるからです。

3.相続放棄とは
 相続放棄とは、「相続人にならない」ための手続きです。
 借金などのマイナスの財産や保証人としての地位は相続人だからこそ引継ぎます。言い換えれば、「相続人にならなければ引継ぐことはない」ということです。

 相続放棄は、①自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、②家庭裁判所に申述する必要があります。

 もし3か月以内に手続きをしないときや相続人として遺産を処分したときは、相続放棄が出来なくなりますので注意が必要です。また、相続放棄をすると相続人でなくなりますので、不動産や預貯金といったプラスの財産も引継げなくなります。

4.遺産分割で「遺産を一切取得しない」こととの違い
 遺産分割で遺産を一切取得しないことを「放棄」「相続放棄」と表現する方がいますが、ここでいう「放棄」「相続放棄」は、「いったん相続人となる」ことを受け入れ、その上で遺産を取得しないとするものです。一方、上記3で述べた家庭裁判所に対してする相続放棄は、「当初より相続人とならない」とするものです。

 そして、「いったん相続人となる」「当初より相続人とならない」の違いは、前者はマイナスの財産を法定相続分の割合で引継ぎ、後者はそれを一切引継がないという効果の点で違いが生じます。

 同じ「放棄」「相続放棄」という表現を使うことがありますが、全くの別物です。
 マイナスの財産を引継ぎたくない場合は、所定の期間内に家庭裁判所に対して「相続放棄」の申述をしなければいけませんのでご注意ください。

5.紙面版けやき通信
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