.png)
遺言の活用~付言事項~
1.遺言者の意図は???
「私の財産全部を長男Aに相続させる。」という内容の遺言があった場合、皆さまは何を思いますか?「そうだよね」と思う方がいる一方、「なぜ?」「どうして?」と思う方もいると思います。
遺言は、特定の方(相続人や友人など)に財産を承継させることを目的として作成しますので、誰にどの財産を承継させるかは書いてありますが、遺言を作った理由や意図などはほとんど書かれることがありません。そのため、遺言の内容を巡って相続人間で様々な「憶測」を呼び、それが相続争いに発展することもあります。
2.付言事項
遺言は、 「法律上の効果が生じるか否か」という点から、「法定遺言事項」と「付言事項」の2つに分けることができます。
①法定遺言事項
書くことで法律上の効果が生じます。
例えば、財産の承継に関する記載や遺言執行者の選任、祭祀承継者の指定などがこれに当たります。
②付言事項
書いても法律上の効果は生じません。
例えば、「きょうだい仲良く生活して欲しい」といった文言がこれに当たります。
3.遺言の特徴
遺言の効力は、遺言者が死亡したときに生じます。
そのため、どうしてそのような内容の遺言を作成したかを遺言者に聞きたくても、遺言者は既に死亡しているため聞くことができません。
これが遺言の特徴の一つであり、そのため冒頭に記載したような「憶測」を呼んでしまいます。
4.理由が分かれば
皆さまは、説明もなく「理解しろ」と言われたことを素直に受け入れて納得することはできますか?せめて説明して欲しい、理由を教えて欲しいと思うことはないですか?
遺言も同様だと思います。
相続人が兄と弟の2名のケースで、説明もなく、弟が兄より多く財産をもらう内容だとしたらどうでしょう?
もし遺言に、「弟は障害があるため働くことができず、将来生活に困らないよう多くしました。」とか、「弟は同居する私やお母さんを介護するため仕事を辞めて介護に専念することになりました。それに対する感謝の気持ちを込めて多くしました。」と書いてあったらどうでしょう?
5.付言事項で実現したいこと
付言事項には、次のようなものがあります(一例)。
①承継させる財産の多い少ないに関する理由の説明
②遺留分侵害額請求権を行使しないで欲しいといった希望
③きょうだい仲良く生活して欲しいといった希望
付言事項は、法律上の効果を生じさせるものではなく、また相続人を法的に拘束するものでもありません。しかし、相続人が、遺言を書いた理由や意図などを知ることができれば、その意図をくみ取り内容を理解することができます。そして、そのことが遺言を巡る相続争いの防止に繋がっていきます。
このように、「相続争いの未然予防」の観点から付言事項の活用を検討してください。
6.紙面版けやき通信
紙面版「けやき通信は、コチラからダウンロードできます。
ニュースレター(2024.1月号).pdf