WEB版けやき通信第20号「遺言の活用~お子さんのいないご夫婦編~」

遺言の活用~お子さんのいないご夫婦編~

1.遺言の活用について
 先月号から始めた遺言編ですが、今月号から「こういうケースは遺言を作っておいた方が良いよ。」ということを中心に説明をしていきます。
 今回のテーマは、「お子さんのいないご夫婦」です。

2.お子さんのいないご夫婦の相続人の確認
 最初に、お子さんのいないご夫婦の相続人を確認していきます。
 なぜ、最初に確認しておく必要があるかというと、「相続人は配偶者のみ」と思っている方が意外と多いようですが、それは誤りだからです。

3.相続人を決めるルール
 相続人は、次のルールにより決まります。
 ①配偶者は、常に相続人となる。
 ②子は、第一順位の相続人となる。
 ③第一順位の相続人がいない場合、父・母など直系尊属が第二順位の相続人となる。
 ④第一順位・第二順位の相続人がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が第三順位の相続人となる。

 上記のルールより、配偶者から見て義理の兄弟姉妹も相続人となることになります。

4.既に兄弟姉妹が亡くなっていたら・・・
 また、既に兄弟姉妹が亡くなっていたら、兄弟姉妹の子、つまり被相続人の「甥・姪」が相続人となります。これを「代襲相続」といいます。

5.問題の所在
 では、次に「どのようなことが問題となるか?」について確認しますが、問題点は2つあると考えています。
 ①相続人が多くなる傾向がある。
 ②相続人間の関係性が希薄化傾向にある。

 ①相続人が多くなる傾向がある点について
  これは単純に、世代が上の方は兄弟姉妹が多いということです。また、代襲相続が生じることで、更に多くなる可能性があります。
 ②相続人間の関係性が希薄化傾向にある点について
  これも単純に、兄弟姉妹が多ければ親子ほど年が離れていることも珍しくなく、どうしても相続人同士の関係性が希薄化傾向になります。特に、代襲相続が生じることでその傾向に拍車がかかります。

6.遺言を作る必要性
 以上のとおり、相続人が多く、またその関係性も希薄であれば、相続人全員から印鑑をもらうのが大変なことは想像できるかと思います。
 しかし、遺言があれば、相続人全員から印鑑をもらうことなく、遺言書に記載のとおりの財産承継ができます
 このことが、お子さんのいないご夫婦が遺言を作成する最大のメリットであり、かつ必要性といえます。

7.遺留分について
 「遺言」と聞くと「遺留分は?」と心配される方も多いと思います。
 でも、ご安心ください。遺留分は、第三順位の相続人である兄弟姉妹(代襲相続の場合も含む)にはありません
 つまり、遺言があり、その遺言が有効である限り、遺言者の財産承継に対する意思が全て達成できることになります。

 このように、お子さんのいないご夫婦にとって、遺言は財産承継についての心強い味方といえます。

8.紙面版けやき通信
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