遺言編スタート~遺言の基礎~
1.遺言編スタート
先月号までは、相続の基礎知識や遺産分割の諸論点について説明してきました。
今月号からは、相続に次いで興味・関心の高い「遺言」について説明して行きます。
2.遺言とは・・・
平たい表現をすれば、「自分の財産を、自分の死後、誰に引継ぐかを決めておくもの」です。
3.遺言の作成能力
遺言は、15歳以上なら作成できます。
ただし、認知症など判断能力が低下した方は作成が困難です。また作成したとしても、後日その遺言の有効・無効をめぐり争いが生じる可能性があります。
4.遺言でできること・できないこと
遺言は、「自分の財産を、自分の死後、誰に引継ぐかを決めておくもの」です。
ですので、「預貯金・土地・建物を長男Aに相続させる。」など財産の引継ぎについて記載することで、その思いを実現することができます。
また、「遺言執行者」「祭祀承継者」「認知」など財産の引継ぎとは関係のないことも記載でき、記載した場合、法律上の効果が生じます。
一方、遺言書に記載しても法律上の効果が生じないものもあります。例えば、遺言の作成趣旨を伝えたり、「きょうだい仲良く生活して欲しい。」といった記載のことです。これを「付言」といいます。
5.自筆証書遺言と公正証書遺言
遺言の作成方式として、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」などがあります。
いずれの方式で作成するかは、遺言者が自由に選択できます。
6.自筆証書遺言とその特徴
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自書し、押印することで作成する遺言です。
特徴として、紙とペンがあれば作成できますので、気軽に安価に作成できます。
一方、全文を自書しなければいけませんので、長文や内容が複雑な場合は不向きです。ただし、相続財産の目録を添付する場合は、その目録はパソコンで作成できるなど、一部を自書しなくても良くなりました。
7.公正証書遺言とその特徴
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、公証人によって作成する遺言です。
特徴として、公証人が作成しますので信頼度が高く、また自書しなくても良いので、長文や内容が複雑である場合に向いています。
一方、公証人の手数料が必要であるなど、作成に若干のコストがかかります。
8.自筆証書遺言書保管制度について
自筆証書遺言は、保管方法も遺言者が自由に決められますが、半面、紛失や第三者による偽造のリスクがあります。このリスクを解消する方法として、作成した自筆証書遺言書を法務局に預ける制度(「自筆証書遺言書保管制度」といいます。)があります。この制度を利用すれば、紛失や偽造のリスクを解消できるだけでなく、家庭裁判所で遺言の存在を確認する「検認」も不要となります。なお、公正証書遺言は、原本が公証役場で保管されますので、紛失や偽造の心配はありません。
今月号は、遺言の基礎知識を中心に説明しました。
次号からは、「遺言の活用」という視点で説明して行きます。
9.紙面版けやき通信
紙面版「けやき通信は、コチラからダウンロードできます。
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